2012年07月14日

自説に固執は・・・・・

 「閑さや岩にしみ入蝉の声」。芭蕉の名句が似合う季節です。かつて、ここに詠まれたセミは何かとの論争があったそうです。句の生まれた山形県が故郷の詩人・斎藤茂吉は、鳴いているのはアブラゼミと主張しました。一方、夏目漱石研究の第一人者・小宮豊隆は、ニイニイゼミだと反駁を加えてきました。
 アブラゼミと主張した茂吉が、同句の詠まれた時期に合わせ、現地に鳴くセミを調査したのは、79年前の7月でした。結果、軍配はニイニイゼミに上がりました。調査が進むほど、主張が崩れゆく劣勢に、生来、負けず嫌いの茂吉が、あぶら汗をかいたかは定かではありませんが、潔く兜を脱いで認識を改めた姿は、立派です。
 異論が出された時、どのような行動を取るかで、結果は大きく異なってきます。いたずらに自説に固執することなく、互いに打ち合うことで、自他共の進歩の道が開かれるのではないでしょうか。

この記事へのトラックバックURL

http://asunimukatuye.mediacat-blog.jp/t80959