2019年03月08日

五十音教育を批判

 福沢諭吉の『学問のすゝめ』は、計300万部を超える明治の大ベストセラーです。自由・独立・平等の新しい価値観が人々の心を捉えたからだが、もう一つの要因は、誰でも読める平易な言葉でつづったことにあります。
 福沢には、こんな逸話があります。最初の近代的国語辞書とされる『言海』を編集した大槻文彦から、それを手渡された時のこと。福沢は感心した様子で手繰っていたが、見出し語の並びが五十音順と気付くと、顔をしかめました。
 当時、小学校で五十音を教えて20年ほどたっていたましが、庶民の実生活では「いろは」がいまだ主流でした。福沢は“「いろは」を知らなければ、下足番もできない”と、五十音教育を批判していたのです。(石山茂利夫著『国語辞書事件簿』草思社)。実学、庶民のための教育を重んじた福沢らしい逸話ですね。

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