2017年10月10日

命の恩人です

 感動する話を一つ。「僕を救ってくれた命の恩人です」。結婚式の披露宴で新郎が紹介すると、一人の男性が立ちました。新郎は小学生の時、体育の授業で腹部を強打し、病院に搬送されました。肝臓破裂で出血も多量。生死の境をさまようも、手術が成功し、奇跡的に一命を取り留めました。その時の感謝を込め、当時の執刀医を晴れ舞台に招いたのです。
 祝辞に立つ執刀医。その言葉は意外なものでした。けがは、医師の経験からみれば極めて厳しい状態。だが幼い少年は懸命に耐え、見事に生還した。「彼は人間に備わる『生きようとする力』の逞しさを私に教えてくれました。その力を患者から引き出すことが、医療の役目であることに気づかせてくれたのです」と。そして最後に言った。「彼こそが私の恩人です」と。
 著名な心臓外科医のバーナード・ラウン氏は「私にとって何よりも偉大な教師は、多くの患者である」(小泉直子訳『治せる医師・治せない医師』築地書館)と記す。患者は“教師”――この言葉には人間への尊敬があり、向上の心がある。ともあれ他者に学ぼうとする人の、何とすがすがしいことでしょうか。

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