2017年04月16日

松坂の一夜

 本居宣長が本格的に国学の研究を志すきっかけは、賀茂真淵の書物との出あいでした。その後、宝暦13年(1763年)5月の夜、真淵が宣長の地元・松坂を訪問中と知るや、宿までおしかけ入門を請うたそうです。世に言う「松坂の一夜」です。
 2人の出会いは、この1回だけです。宣長は、往復書簡によって、真淵が世を去るまでの6年間、厳しくも慈愛に満ちた指導を受け切りました。真淵の没後も、毎年の祥月命日には書斎に位牌を掲げ、生涯、師恩を忘れなかったそうです。
 小林秀雄は大著『本居宣長』の中で、2人のやりとりを丹念に詳述しています。それが宣長を宣長たらしめる要の一つと感じたのかもしれません。

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