2016年06月29日

ロック

 「僕には才能がありませんから」「力はございませんが……」。これは、謙遜を美徳とする日本人が、言いがちなせりふです。
 思想家で、武道家でもある内田樹氏は、自分も若いころにはよくそう言ったそうですが、教える立場になった時、それは禁句であることが分かったと語っています。氏の同門に昔、いくら勧められても初段の審査を受けない人がいました。自分にはまだ黒帯の実力がない、と。そのうち後輩にもどんどん抜かれ、不思議なことに、10年以上稽古しても、さっぱり彼の技能は進歩しなかった。「何か」が能力の開花に「ロック」をかけていたのです。(『街場の戦争論』ミシマ社)

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