2015年05月26日

庶民の中に「英雄」を見たのです

 明治から昭和にかけて活躍した、反骨の言論人・長谷川如是閑にかかると、秀吉もただの“猿面”となり、家康で思い出すのは「権現様は逃げるが勝ち」の一句だけ、となります。
 「アンチ・ヒロイズム断片」(『長谷川如是閑評論集』所収、岩波文庫)という文の中で、少年時代の自分にとって、英雄とは教科書等に出てくる豪傑ではなく、「煮たて隠元の爺さん」と呼ばれた煮豆売りだった、と書いています。
 じいさんは「煮たてーいんげん」と声を張り上げ、走る。正確に、同じ時刻に同じ場所を通る。煮豆はいつも湯気が立つほど熱く、絶妙な味。この煮豆づくりに、じいさんは研究を重ね、老境に達して納得の味を得たのです。
 如是閑は、懸命に、しかし誇りをもって生きる庶民の中に「英雄」を見たのです。

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