2016年11月10日

不遇の下積み時代

 映画「幸福の黄色いハンカチ」が初出演作だった武田鉄矢さんは、撮影中、よく叱られました。「俺ばっかりいじめるんですよ」とこぼす武田さんを、主演の高倉健さんが励ました。「伸びないやつは、しごかないんだよ」と。
 高倉さんも、大学卒業後に入った俳優養成所では落ちこぼれだったそうです。「他の人の邪魔になるから見学していてください」と苦言されたこともありました。それでも母からの「辛抱ばい」との言葉を支えに、映画界で不動の地位を築いたのです。
 不思議にも、同じ11月10日に世を去った高倉さん(2014年)、森光子さん(12年)、森繁久彌さん(09年)といった名優には皆、不遇の下積み時代がありました。先の高倉さんの言葉の重みは、大スターゆえではないだろうか。辛酸と苦闘の青春時代を、貴重な芸の肥やしに転じながら、演技の新境地を開いた人生の重みです。  

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2016年11月09日

名は体を表す

 「冨嶽三十六景」などで知られる、日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎。
 彼は19歳の時、勝川春章の弟子となり、「勝川春朗」と名乗りました。以来、「宗理」「辰政」「画狂老人」をはじめ、90年の生涯で使った画号は「30」を超えます。
 画号とは、作品に記す本名以外の名前のことです。画号を変えた理由はさまざまあろうが、北斎は多彩な画風を持ちました。画号の変更は、新しい画風に挑む心意気のあらわれとみたいですね。「名は体を表す」からです。  

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2016年11月08日

脇役の本望

 美術展などの照明技師として働く人の話です。芸術作品を心地よく鑑賞してもらえるように光を当てたいが、一方で、作品の劣化を防ぐには光を抑えなくてはならず、とても神経を使う仕事だそうです。
 次に切り出した言葉が、興味深かった。「鑑賞した人から『今回の照明、とても良いね』と言われるのは、僕らには褒め言葉ではない」。主役を引き立たせるのが脇役の本望。陰の仕事が目立つのは失敗、ということらしい。  

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2016年11月07日

最先端の潮流

 アメリカのニューヨーク。文化や経済など、しばしば最先端の潮流が起きるこの巨大都市で今、注目すべき動きが見えています。
 本や雑貨は、インターネットで購入、音楽はダウンロードするという動きが10年ほど前から始まっています。そのため街の書店、レコード店(CDショップ)が次々と閉店を余儀なくされています。しかし、今、ニューヨークでは、その逆の動きが著しいそうです。
 小さなレコード店、書店が、次々と開店しだしました。その多くに共通した特徴があるそうです。売り場のなかに、近隣の人たちが本を読んだり、音楽を聴いたりしながら、コーヒーを飲んで、自由に語り合うスペースが設けられている事です。ネットではできないコミュニケーション、地域の人とのつながりの「拠点」として、店を利用してもらおうというのです。  

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2016年11月06日

二軍の監督

 プロ野球の日本シリーズは、北海道日本ハムファイターズの優勝で幕を閉じました。
 栄光を目指して戦うのは、二軍の監督も同じです。日本一へ、戦力となる選手を一軍に送ろうと必死なのです。二軍監督が心を砕くのは、技術面だけではありません。例えば、ある球団の監督は就任直後、選手にこう訓示したそうです。「毎日、ヒゲを剃ってグラウンドに出ろ」。観客に対する身だしなみを強調したのです。社会人としての自覚を徹底させることが、緻密なプレーの意識付けにもつながるとの狙いです。
 二軍で猛練習に挑み、首位打者のタイトルを獲得した選手が、自信を持って語っています。「ここ(二軍)は、人間修行の場なんですよ」(『プロ野球 二軍監督』赤坂英一著、講談社)。野球界のトップの世界に入る選手たちの、能力差はわずかなものです。成功するかどうかに、礼儀や感謝という人間力が関わるという視点は新鮮でした。心を磨くことで、技術も生かされるのです。  

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2016年11月05日

明けの明星

 寒いですけど、夜明け前の空を見てください。東の空に金星と木星が並んでいるのが見えます。
 木星は地球の約11倍の直径。だが、地球とほぼ同じ大きさの金星の方が、大きく輝いて見えます。これは距離が近いから当然ですが、輝く理由はほかにもあります。金星は全体が厚い雲に覆われ、時速400㌔もの暴風が吹き荒れる過酷な環境。「明けの明星」のひときわの輝きは、厚い雲によって、太陽光の約80%を跳ね返し、反射させているからだそうです。知っていました?  

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2016年11月04日

新渡戸稲造

 今年は、新渡戸稲造の生誕154年です。彼は国際連盟事務次長を務めた、近代日本を代表する国際人です。
 新渡戸は若いころ、演説が大の苦手だったそうです。とにかく震えが止まらない。“聴衆はただの椅子”と思い込んでみるが、よく見れば、やはり人の顔。“聴衆は気心知れた友ばかり”と思ってみても、実際は面識もない人ばかり。“聴衆をのみ込んでやれ”と思うほど、自分がのまれる気がした――ユーモアも交え、赤裸々に述懐しています(『新渡戸稲造全集』第10巻、教文館)
 その彼が吹っ切れた瞬間があります。「演説を賞められたい、或は自分がよくいはれたいと色気があればこそ、恐れ戦くもの」「賞めるか、誹るかそれは他人のすることで、自分のすることは只ベストをするのみだ」。こう腹を決めた時を境に、演説の達人へと飛躍したそうです。  

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2016年11月03日

ゴッホ

 絵画の巨匠ゴッホが有名になったのは死後のことです。2200枚描いた絵も、生前は1枚しか売れなかったそうです。
 彼は自信がなく、常に葛藤していました。「『お前は画家ではない。』という内心の声が聞えてくるときには、しゃにむに描くのだ。そうすれば、ほら、その声は沈黙してしまう」「自信をもって、正しいことをしているのだという確信をもってやらなければならない」(タイムライフブックス編集部編『ファン・ゴッホ』  

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2016年11月02日

マンデラ

 「変わるべき時に私自身が変われないなら、人々に変化を求められません」。これは、映画「インビクタス/負けざる者たち」における、マンデラ大統領のせりふです。
 アパルトヘイト(人種隔離)の悲劇を越えて、新生・南アフリカ共和国を率いる氏は、人種の融和に心を砕く。「和解と赦し」を掲げ、ラグビー代表チームの白人キャプテンとも友情を紡ぎました。「なぜ?」との問いへの返答が、冒頭の言葉です。同国で開催されたワールドカップにおける感動ドラマも、そこに生まれたのです。
 「心の強さ」には二つあります。勇気と寛容です。勇気とは、己心の衝動を抑えて、方向を転ずる能力。寛容とは、人々を助け、友情の絆によって結びつこうとする努力。哲学者スピノザは主著『エチカ』で、そう語っています。マンデラ氏は、その二つを備えているといっていい人物です。  

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2016年11月01日

人の心を前へ進ませる力

 小説家の川端康成がある日、青年映画監督として活躍していた篠田正浩さんを、鎌倉の自宅に招いたそうです。川端康成は日本映画の新たな動きについて聞きたかったらしい。30も年下の青年の話を聞く間、大文豪はずっと正座を崩さなかった。辞去しようとすると、「いや、まだまだ話してください」と請うたという。この話はのちに篠田さんが、ラジオのインタビューで語った思い出です。
 老境に入っても貪欲な求道心が、若い篠田さんには鮮烈だったのであろう。幾つになっても成長への意欲を失わない人には、人の心を前へ進ませる力があることを実感します。  

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