2014年09月24日

先入観

 ある小学校で、児童に自身の憶記を基にアリの絵を描いてもらった時の話です。児童の描いたアリは、頭と胴体の二つしかなく、それぞれに足が2本ずつ、頭から後ろへ2本のひげが伸びる、えたいの知れないアリが出来上がりました。
 次に、シャーレに入れた本物のアリを一人一人に渡し、「今度はこれをようく見て、アリの絵を描いて下さい」と。しかし、再度描いた絵も、多くが1枚目と同じだったそうです。これは先入観が、いかに強力なものかを物語っています。
 今度は丁寧に児童と対話しました。「アリの体ってほんとに頭と胴体しかないのかい?」「足はほんとに四本かい?」。3枚目の絵は、昆虫らしく頭と胸と腹に分かれ、胸から6本の足、頭に2本の触覚が生えていた(日高敏隆著『生きものの流儀』岩波書店)
 「百聞は一見にしかず」といいますが、見てはいても、実は見えていないことは多いものです。対象を知ろうと真剣に心を向けると、いろいろなことが見えてきます。
  

Posted by mc1460 at 11:30Comments(0)TrackBack(0)つぶやき