2013年01月13日

「半目」の差

 4千年の歴史を持つ囲碁。囲碁は中国から伝わり、黒白の石で攻防が繰り広げられ、最後に、自陣の多い方が勝つルールとなっています。さらに詳しく言えば、碁盤の目を「一目」と数え、引き分けをなくすため、最小差は「半目」と決まっています。棋士の世界では、この半目をめぐり、数多くのドラマがありました。
 随分前ですが1978年の「棋聖戦」のドラマです。52歳の王者に対し、挑戦者は30歳の加藤正夫氏でした。若さと勢いにまさる加藤氏が、7番勝負で、先に3勝。“あと1勝”という時、王者は、驚異的な粘りを見せました。連勝で挽回し、最終の第7局。何と、「半目」の差で逆転勝利。加藤氏はタイトルを逃しました。
 200手以上の打ち合いの末、勝負は、わずか半目差で決まったのです。加藤氏は帰路の途中、終盤の局面を思い起こしながら、はっと叫んだそうです。「気合いと執念の差だった」と。のちに加藤氏は「十段戦」に臨んだ際、すべての勝利を半目差で制してタイトルを取り、“奇跡的な勝利”と絶賛されました。加藤氏は「半目」の厳しさを知り抜いたからこそ、栄光をつかみ取ることができたに違いありません。
 名人2期、本因坊4期、王座11期など数々のタイトルを獲得し、名誉王座の称号を持つ加藤正夫氏は、2004年に日本棋院理事長に就任、日本棋院の改革に取り組みましたが、志半ばの2004年暮れに脳梗塞に倒れ、世を去りました。享年57歳でした。

  

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2013年01月12日

声かけ

 こんな経験はありますか? 悪天候の中で飛行機に乗りました。その機内の出来事です。離陸してしばらく飛行機の大きな揺れが続いていました。心配そうな乗客に対し、パイロットが機内放送で安全を知らせてくれました。揺れが収まると、客室乗務員も笑顔で一人一人の乗客に声をかけていきました。
 だが、もしアナウンスも何もなかったら、どれほど不安でしょう。揺れ続ける飛行機。アナウンスがない。あらぬ考えまでが頭をよぎる。普段は気にとめませんが、一つの「声かけ」の持つ意味の大きさが必要と身に染むことでしょう。
 人生を幸福という目的地を目指す航路に例えてみましょう。苦難や宿命の嵐に遭遇し、“機体”が揺れることもあります。“この進路でいいのか”と葛藤も起きることでしょう。そんな時、的確なアドバイスをくれたり、「心配ないよ」「必ずたどり着ける」と温かく声をかけ、寄り添う友がいてくれたら、どれほど心強い事でしょう。
 寒々とした心の景色ばかりが目立つ世相だからこそ、“あの人は大丈夫だろう”ではなく、“大丈夫だろうか”と思いやる心を広げたいものです。その思いを、「声」という行動で表したいものです。  

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2013年01月11日

わが子の個性を認め、成長を信じて見守る

 青森県出身の画家・鷹山宇一氏(故人)は、独創的な作品もさることながら、豊かな人間性も注目を集めました。娘のひばりさん(青森県立美術館長)の父親・鷹山宇一氏のエピソードです。
 小学生の時、ひばりさんは本が好きで、学校には行かず読書三昧だったそうです。たまに学校に行くと、決まってテストの日にぶつかりました。当然のごとく、ひばりさんは勉強していないから点数は悪く、母親に叱られました。ところが父親の鷹山氏は「大したものだ。何もしてなくても30点も取れるのか」「勉強する時間があれば本を読んでいればいい」と認めてくれたそうです。 学生時代、ひばりさんは奇抜な髪形を大学にとがめられ、処分の対象になりました。学校に呼び出された鷹山氏は学長に訴えました。“人間は姿形ではなく、自分の力を信じて社会貢献する人生こそ尊いということを、娘に教えてほしい”と。土下座せんばかりに頭を下げた父を見て、ひばりさんは、いつかこの父のために生きる人生をみつける、と心に誓ったそうです。
 どこまでも、わが子の個性を認め、成長を信じて見守る、父親・鷹山宇一氏。言うは易く行うは難しですが、親が子どもに寄り添い、一緒に成長しようと努力する時、親子関係はより豊かに広がっていくことでしょう。ひばりさんは後年、父の美術館に携わり、学生時代の誓いを見事に果たしています。  

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2013年01月10日

「2」という数字

 「クモの糸にぶら下がる」――芥川龍之介の小説を彷彿させる難題に、実際に挑戦した人がいます。奈良県立医科大学の大崎茂芳教授です。教授は試行錯誤の末、人間がぶら下がるのに必要な量のクモの糸を採取しました。そして7年前、長年の夢を実現させたのです。
 その過程で様々な発見がありました。例えば1本に見える糸ですが、実は2本の繊維でできていました。しかも2本のうち1本が切れても、クモが落下することはありません。もう1本は保険というわけです。教授はクモが4億年の進化の中で得た安全の基数が「2」であることに教授は感銘を受けたという(『クモの糸の秘密』岩波書店)
 「2」という数字は我々が日常の無事故を目指す上でも重要です。一人より二人での点検。ドアの鍵を二重にする。「2」は確実に安全性を高めます。  

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2013年01月09日

真理を求め続けたガリレイ

 天文学の父ガリレオ・ガリレイが、1609年に望遠鏡で天体観測を行ってから今年で404年になります。今では考えられませんが、ローマ教皇庁から地動説を異端審問されながらも、真理を求め続けたガリレイ。その戦いの生涯を、ドイツの文豪ブレヒトが1938年に戯曲に描きました。
 当時はナチス政権下。当局により文豪の著作は刊行禁止となり、焚書の対象とされました。それでも彼は、権力の横暴にペンで立ち向かいました。ブレヒトは自らの信念を作中のガリレイに語らせています。「もし私が沈黙するとしたら、それは疑いもなく全く下等な理由からだ。いい生活を送り、迫害されないため」(岩淵達治訳『ガリレイの生涯』岩波文庫)。“迫害が何だ! 正しいことは、正しいと叫ぼうではないか”――悪に対する傍観や諦めが蔓延する時代にあって、文豪は正義の言論で敢然と人々を鼓舞し続けています。  

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2013年01月08日

基本とは誠実

 幕末の蘭学者としても知られる三河国田原藩の家老・渡辺崋山は、人と交渉する際に心掛けるべき教訓として「八勿の訓」を掲げました。“感情に流され、平常心を失ってはならない”“表情は冷静に、心は温かく”など全8条のうち、最後に彼が綴った一文は、“基本が確立していれば、あとは皆がそれに従う。その基本とは誠実である”というものでした。
 昨今、「交渉術」を説く本が多く発行されています。“日本人は交渉下手”とか“国際社会で発言力を高めよ”等の意見も耳にします。が、要はテクニックではないと思います。
 カンボジアや旧ユーゴで紛争調停を指揮した明石康・元国連事務次長は、こう語っています。「調停者は雄弁である必要はない」「滔々と捲し立てるよりも、まずはグッド・リスナーであるべきだ」(『「独裁者」との交渉術』集英社新書)。しかも、これは調停のプロたちに共通の意見なのです。よい聞き手であれ!――これも「誠実」と一脈通じる話です。  

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2013年01月07日

韓国企業の家電

 アジア各地で、風土や風習に合わせた韓国企業の家電が売れています。一例を挙げると、蚊取りエアコンは、蚊が媒介するデング熱の感染が多いインドネシアで、ヒット商品になっています。長時間の停電でも保冷能力を維持できる冷蔵庫、カレーのメニューボタンのある電子レンジは、インドで好評だそうです。どこにいてもイスラムの聖地の方角が分かる羅針盤付き携帯電話は、中東で販売されています。これらの地域限定製品は、現地の生活実感に応えたことで、消費者の心をつかんでいます。
 さらに、携帯オーディオやスマートフォンのように、新しい生活スタイルを訴え、世界中の暮らしの風景を塗り替えるタイプのヒット商品もあります。一方、それぞれの地域の要望、小さな声に耳を傾けることによっても、チャンスは大きく広がっているのです。
 日本企業が苦戦していますが、韓国企業の取り組みは、ソニーもシャープもパナソニックも創業時代は取り組んでいたことです。
  

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2013年01月06日

青年を育てよう

 中国の文豪・魯迅は綴っています。「第一に、人間を確立することが大切である。人間が確立して後、始めてあらゆる事がその緒に就く」(松枝茂夫訳)。さあ青年を育てよう! それが世界をより善く変えていく王道であるからです。

魯迅 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%AF%E8%BF%85  

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2013年01月05日

漫画「ONE PIECE(ワンピース)」

 漫画「ONE PIECE(ワンピース)」最新刊の初版発行部数が出版史上、最多記録の更新を続けています。漫画「ONE PIECE(ワンピース)」は子どもから大人まで、世代を超えて読まれています。なぜ、ここまで人気を呼ぶのでしょうか? 社会ネットワークの分析を専門とする関西大学の安田雪教授は、「ワンピースの中心的なテーマが『仲間』だからではないでしょうか」と語っています。
 「無縁」という言葉に象徴されるように、「人間と人間の絆」の再生は、社会の大きな課題です。安田氏は、多くの人が“かけがえのない仲間がほしい”という思いを持っていることが人気の背景にある、と考察しています。(『ルフィの仲間力』アスコム)  

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2013年01月04日

力強い言葉が求められる時代

 新聞には何より、伝えたい主張、哲学が不可欠です。その上で、それを社会のどこまで届けられるかは、作る人間の研鑽と技量と工夫で決まってきます。文字を大きく、ふりがなを多く振ることも、その挑戦の一つでしょう。
 ガンジーやニーチェなど、偉人の名言を短くまとめた本の出版が相次ぎ、好評だそうです。心の拠り所となる端的で力強い言葉が求められる時代といえます。  

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2013年01月03日

利他の行動

 日本の停滞を嘆く「失われた10年」という言葉は今、「失われた20年」へと、そのまま数字が入れ替わっています。「経済成長=幸福」という方程式がすっかり錆び付いたところに東日本大震災が起こりました。大切な命が奪われた。インフラ、生活手段が消えました。被災者の方々の苦闘は今も続いています。しかし、その中で見いだした希望がありました。
 「不思議だね……困った時こそ『人のために』って動けたのよ」。ある婦人は、震災当時を振り返りました。「人のために生きられることが幸せです」。自らも被災しながら、被災者支援の仕事に携わる青年は語りました。「人に尽くす」ことは、「人のため」だけでなく「自分のため」であることを、私たちは学んだのです。
 最新の脳科学の研究でも、恋愛などより、「利他の行動」から得る快感の方がずっと大きいことが分かりつつあり、その快感は、他者の評価の有無によっても変わらないとする見方があります(『脳科学からみた「祈り」』中野信子著、潮出版社)  

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2013年01月02日

雪間の草の春

 「花をのみ待つらん人に山里の 雪間の草の春を見せばや」(藤原家隆)。これは、いつ咲くかと花ばかり待つ人に、見せてあげたい。山里の雪の隙間に芽生える草の姿に、本当の春があることを――歌人・藤原家隆は冬の中に春を見ています。
 作家の白洲正子さんは、この歌は「発見の驚きと、喜びに満ちている」と表現しています。秋の実りが終わり、すべて滅びたかに見える冬。が、すでに新しい生命の胎動は始まっている、と。
 花や緑に眼を奪われず、名もなき草に生命の力強さ、美しさを発見するのは、この時です。その感動はまた、春の到来の喜びを何倍にもしてくれるはずです。
  

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2013年01月01日

安心・安全・安定

 21世紀に入り、はや13年目の新年を迎えました。、新世紀の課題として環境問題をはじめ難題も多いですが、人類の英知と協調の力で乗り越えていきたいものです。
 国内に目を転じれば今、多くの人が「安心・安全・安定」を希求しています。東日本大震災の復興、金融危機による国内経済の動向、地域社会の治安や環境問題、食品、健康に至るまで、一日も早く安定した生活を確立したいとの願いは強くなっています。
 「善悪可否を考え、たがいに取引して物を融通しあい、ともに利益を求めるのが、商の本義である」(『虹を見ていた』津本陽著、NHK出版)。これは明治の実業家・渋沢栄一の言葉ですが、これは経済活動の基本理念を示しています。善悪をわきまえ、物を融通し、ともに利益を求めるという彼の信条には、人間の温かみを感じます。
 人には二つの顔があります。他者の幸福を考えられる顔と、利己に走る顔。自分中心のわがままな顔をしている時、心はエゴイズムの闇に包まれています。エゴをどう超克するか。そこに諸課題を解く鍵があると私は思います。  

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