2012年07月17日

傲慢な権力者

 「メロスは激怒した」――。太宰治の『走れメロス』は、この一節から始まります(岩波文庫)メロスは、何に対して怒ったのか? それは、「邪知暴虐の王」に対してでありました。彼は、罪のない人々を平然と殺す傲慢な権力者が許せなかったのです。青年らしく正義を訴えました。命懸けで友情を貫きました。その姿が最後には、王の心を変えたのです。
 山本周五郎の代表作に『赤ひげ診療譚』があります。その中に“赤ひげ先生”と称される老医が、貧しい病人を苦しめる圧政を、糾弾する場面があります。“赤ひげ先生”は叫びます「おれはごまかされないぞ」「人間を愚弄し軽侮するような政治に、黙って頭をさげるほど老いぼれでもお人好しでもないんだ」(ハルキ文庫)。
 市井の人々の幸せを願う心は、時に「怒り」となって噴出しましょう。優しいだけでは人々を守れないからです。また、庶民を踏みにじる動きを“見て見ぬふり”は、悪への加担です。  

Posted by mc1460 at 18:51Comments(0)TrackBack(0)つぶやき